スポーツチャンバラとは
スポーツチャンバラ(通称:スポチャン)は、「チャンバラごっこ」から発展したスポーツです。空気を入れたエアーソフト剣と頭を守る面をつけて戦います。安全な刀を手に、決められた形もなく自由に立ち振る舞えるのは剣道や空手道など他の武道にはない魅力です。
また武術としての側面ももち、自身の負けや反則を認めて申告する「自心審判」の考えが深く根付いているのも特徴のひとつ。自らで自らを審判するためには、他者を認める心の余裕が不可欠です。スポーツチャンバラは、まさに武士道の精神が身につくスポーツといえるでしょう。
スポーツチャンバラの基本ルール
スポーツチャンバラのルールは「打ったら勝ち・打たれたら負け」というシンプルなもの。打突部位はどこでもOKですが、相手の身体に十分な威力で剣を当てなければ勝利にはなりません。
試合時間 | ・試合は1分間、1本勝負とし、延長戦は30秒とする ・決勝戦は3分間、3本勝負とし、延長戦は1分とする ・延長戦において相打ちの判定がされた場合は経過時間を0に戻す ・主催者は大会の進行状況に応じて、一定時間が経過した場合に両選手を負けにできる |
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打突部位 | 足から面までの全身 |
勝敗の決め方 | 相手の身体に十分な威力で剣を当てることで勝利となる |
スポーツチャンバラの反則① かばい手
第11条
スポーツチャンバラ競技規定ならびに審判規定
1.小太刀・長剣フリー等,片手で得物を把持する競技において,相手選手の打撃を,得物
を把持していない腕の小手部で防いだ場合には,これをかばい手とする。
2.かばい手があった場合には,当該打撃を有効打突としない。
3.かばい手があった場合には,主審は,選手に対し,「かばい手」と宣言する。
4.かばい手があった場合には,主審は,原則として試合を停止させなければならない。
5.かばい手を行った選手が,主審が試合を停止する前に行った打突については,これを有
効打突としない。
6.かばい手を宣告された選手は,かばい手を行った腕を,身体の後方に固定するものとし,
当該試合の間,その状態を継続しなければならない。
ただし、有効打突または相打ちの宣告があった場合には、その状態を解除することがで
きる。
小太刀や長剣フリーのように片手で獲物を持つ種目の場合、獲物を持っていない手で相手の攻撃を防ぐ「かばい手」というルールがあります。かばい手と審判に宣告された選手はその手を背中に回し、腕が斬られたものとして試合を再開できます。ただし、相打ちをした場合はかばい手が解除されます。
スポーツチャンバラの反則② 場外
試合中、コートから両足が出る「場外」を行うと一回目は反則、二回目は場外反則として負けとなります。獲物に一定の長さがある槍や棒などの種目では、場外に出やすいため特に注意が必要です。
スポーツチャンバラの反則③ 獲物から手を放す行為
両手長剣や槍・なぎなた、棒・杖など両手で獲物を持つ種目では、獲物から手を放す行為は危険行為として反則を取られます。手を放しながらの打突は有効打として判定されないばかりか、場合により危険行為として反則負けとなります。
スポーツチャンバラのコート規定
スポーツチャンバラのコート規定は以下の通りです。
- コートは一辺が5m~9mの正方形または長方形とする
- 床は板張りを原則とする
- 開始線は中心より1.5mの位置に均等に左右1本ずつ配置し、長さは60㎝とする
- コートの外辺は他のコートの外辺や壁、障害物から1.5m以上離れていなければならない
- コートの各線は5~10㎝の白線にする
スポーツチャンバラの用具・服装規定
スポーツチャンバラの用具規定は以下の通りです。
- スポチャン用具の改造は禁止
- 海外や地方で見かける協会公認規程以外の面・剣の使用は練習時、大会時に問わず、協会では一切責任を負いません
- 中に芯の入った剣の使用は厳禁
- 芯棒をウレタンで包んだソフト剣の打突の練習、試合等の利用は禁止
また、スポーツチャンバラの服装規定は以下の通りです。
- 大会で使用できる用具は協会が定める用具検査規定に適合したもののみとする
- 大会で着用する服装は選手が自由に選択できるものとする。ただし、公序良俗に反する服装は着用できない
- 健康上のやむを得ない事情を除き、審判が許可できない限り、選手は裸足で参加せねばならず、靴・足袋などを着用できない
スポーツチャンバラ種目別のルール
スポーツチャンバラには以下の種目があります。大会では「部内種目」から1種目、「部外種目」から1種目の出場が可能です。それぞれの特徴は以下の通り。
基本動作
[総則]
スポーツチャンバラ競技規定ならびに審判規定
第40条
基本動作は、スポーツチャンバラにおける、正しい姿勢、動作、剣理、気勢その他の要素
を習得し、その優美を表現することを目的として実施する。
[用具および構え]
第41条
1.基本動作における得物は、小太刀・長剣・二刀のうち、選手が選択したものとする。
2.構えについては、右構えを原則とするが、左構えを取ることも禁止されない。
基本動作は号令係の、「気をつけ」「礼」「構え刀」「面を打て」「小手を打て」「右から胴を
打て」「左から足を打て」「突け」「元の位置」「納め刀」「礼」の号令に従ってそれぞれの動作を行い、完成度を競う芸術種目です。
小太刀
長さ | 60㎝ |
分類 | 部内種目 |
[小太刀]
スポーツチャンバラ競技規定ならびに審判規定
第30条
1.小太刀の試合は、各選手が、小太刀一振りのみを把持して、試合を行うものとする。
2.各選手は、自由に、小太刀を把持し、構えることができる。ただし、自分の得物のエア
ーソフト部のみを把持して構えることはできない。
長剣
長さ | 100㎝ |
分類 | 部内種目 |
[長剣フリー]
スポーツチャンバラ競技規定ならびに審判規定
第31条
1.長剣フリーの試合は、各選手が、長剣一振りのみを把持して、試合を行うものとする。
2.各選手は、自由に、長剣を把持し、構えることができる。ただし、自分の得物のエアー
ソフト部のみを把持して構えることはできない。
一般的に片手で長剣を持つケースが多いですが、両手で構えて参加もできます。
二刀
長さ | 小太刀:60㎝ 長剣:100㎝ |
分類 | 部内種目 |
[二刀]
スポーツチャンバラ競技規定ならびに審判規定
第32条
1.二刀の試合は、各選手が、長剣および小太刀を各一振り把持して、試合を行うものとす
る。
2.得物の持ち方、構え方は自由であるが、同じ腕で小太刀と長剣を両方把持してはならな
い。また、自分の得物のエアーソフト部のみを把持して構えることはできない。
3.二刀の試合においては、両腕を有効打突部位とする。
一般的に利き手に長剣、反対の手に小太刀をもつことが多い。かばい手が存在しないため、利き手と反対の手を打たれても有効だとして判定されます。
両手長剣
長さ | 100㎝ |
分類 | 部外種目 |
[長剣両手]
スポーツチャンバラ競技規定ならびに審判規定
第33条
1.長剣両手の試合は、各選手が、長剣を一振り把持して、試合を行うものとする。
2.各選手は、両手で長剣を把持し、構えなければならない。
両手で把持している限り、その余の構え方は自由である(左前・右前など)が、得物の
エアーソフト部を把持してはならない。
3.選手は、打突を行う際には、必ず両手で長剣を把持する状態を継続していなければなら
ない。打突を行う際に、選手が両手で長剣を把持していなかった場合には、故意によるものか
過失によるものかを問わず、反則とし、相手選手に一本を与える。
ただし、剣を手放したことが、相手選手との接触等、不可抗力の外部的要因によるもの
である場合には、この限りでない。
4.長剣両手の試合においては、両腕を有効打突部位とする。
以前は「諸手長剣(もろてちょうけん)」と呼称していた時期もあり、熟練者の一部は今でもそのように呼ぶことがある。一般的に利き手を上に、反対の手を下にして保持することが多い。
盾小太刀・盾長剣
長さ | 小太刀:60㎝ 長剣:100㎝ |
分類 | 部外種目 |
[楯小太刀および楯長剣]
スポーツチャンバラ競技規定ならびに審判規定
第34条
1.楯小太刀の試合は、各選手が、小太刀一振りおよび楯一個を把持して試合を行うものと
する。
2.楯長剣の試合は、各選手が、長剣一振りおよび楯一個を把持して試合を行うものとする。
3.得物の持ち方、構え方は自由であるが、同じ腕で楯と小太刀(または長剣)を両方把持
してはならない。
また、楯を腕に装着するか、手で掴むかも自由であるが、楯の持ち手以外の部分を掴ん
ではならない。
腕以外の部分に楯を装着することは認めない。
4.楯で相手選手を打撃してはならない。この場合は、12条5号と同様の反則とする。
5.楯に当たった打撃は、有効打突としない。
6.楯を把持している腕は、有効打突部位とする。
小太刀や長剣を利き手に持ち、反対の手で盾を持つことが多い。
短刀
長さ | 45㎝ |
分類 | 部外種目 |
[短刀]
スポーツチャンバラ競技規定ならびに審判規定
第35条
1.短刀の試合は、各選手が小太刀または短刀一振りを把持して試合を行うものとする。
2.各選手は、自由に、小太刀または短刀を把持し、構えることができる。
3.短刀の試合においては、打突は刺突のみによって行われるものとする。
打撃については、全て有効打突としない。
また、有効打突部位は、面部および胴部のみとする。
4.短刀の試合においては、危険の無い範囲において、相手の身体または衣服を掴むことが
できる。
また、大会主催者の判断において許可した場合には、蹴りを用いることもできる。
蹴りを用いることもできるが、多くの大会では禁止されている。安全性の観点から、段級を保有しているだけでなく、安全講習への参加のほか、グローブの着用も義務付けられている。
短槍
長さ | 100㎝ |
分類 | 部外種目 |
[短槍]
スポーツチャンバラ競技規定ならびに審判規定
第36条
1.短槍の試合は、各選手が長剣一振りを把持して試合を行うものとする。
2.各選手は、必ず、両手で長剣を把持し、かつ半身ないし横構えの姿勢を取らなければな
らない。
各選手は、必ず、一方の腕で、長剣の持ち手部分を把持し、他方の腕で、長剣のエアー
ソフト部分を把持しなくてはならない。
刺突の動作中に片手を離すことは差し支えないが、動作の開始時において片手を離し
た状態であることは許されない。
また、動作の終了後は、速やかに両手で得物を把持する姿勢に戻らなければならない。
3.短槍の試合においては、打突は刺突のみによって行われるものとする。
打撃については、全て有効打突とせず、危険行為とみなす。
また、有効打突部位は、面部および胴部のみとする。
長剣の鍔を外して槍のように構えて試合を行う種目。2000年代後半に登場したが、選手細かい規定により参加者の少ない種目の一つとなっている。なおスポーツチャンバラの種目で唯一、条件を満たせばエアーソフト部分を保持してよい。
長槍
長さ | 200㎝ |
分類 | 部外種目 |
[長槍]
スポーツチャンバラ競技規定ならびに審判規定
第37条
1.長槍の試合は、各選手が長槍一振りを把持して試合を行うものとする。
2.各選手は、必ず、両手で長槍の持ち手部分を把持し、かつ半身ないし横構えの姿勢を取
らなければならない。
刺突の動作中に片手を離すことは差し支えないが、動作の開始時において片手を離し
た状態であることは許されない。
また、動作の終了後は、速やかに両手で得物を把持する姿勢に戻らなければならない。
3.長槍の試合においては、打突は刺突のみによって行われるものとする。
打撃については、全て有効打突とせず、危険行為とみなす。
また、有効打突部位は、面部および胴部のみとする。
4.選手が、打突の際、得物のうち、エアーソフト部以外の部分を、相手選手に接触させた
場合は、故意によるものか過失によるものかを問わず、反則とし、相手選手に一本を与え
る。
2000年代初頭までは、「片手突き」と呼ばれる、動作の開始時に片手を放した突きを行うことができたが、現在では禁止行為の一つになっている。打突が許可されている長巻と合同で試合を行う場合、自分の獲物が長槍なのか長巻なのかを事前に申告する必要がある。
棒・杖
長さ | 棒:200㎝ 杖:140㎝ |
分類 | 部外種目 |
[棒および杖]
スポーツチャンバラ競技規定ならびに審判規定
第38条
1.棒および杖の試合は、各選手が棒または杖を一振り把持して試合を行うものとする。
2.得物の持ち方および把持可能部位については、別図7の通りとし、常に両手で把持可能
部位を把持しなければならない。
3.選手が、打突の際、得物のうち、エアーソフト部以外の部分を、相手選手に接触させた
場合は、故意によるものか過失によるものかを問わず、反則とし、相手選手に一本を与え
る。
2000年代初頭に片手での操作が禁止されたことで選手人口が激減した種目の一つ。試合中に片手を放してしまった場合は、そこで試合を中断することもある。
長巻
長さ | 200㎝ |
分類 | 部外種目 |
[長巻]
スポーツチャンバラ競技規定ならびに審判規定
第38条の2
1.長巻の試合は、各選手が長巻を一振り把持して試合を行うものとする。
2.得物の持ち方および把持可能部位については、別図8の通りとし、常に両手で把持可
能部位を把持しなければならない。
3.選手が、打突の際、得物のうち、エアーソフト部以外の部分を、相手選手に接触させ
た場合、打突の際に、把持可能部位以外の部位を把持した場合は、故意によるものか過失に
よるものかを問わず、反則とし、相手選手に一本を与える。
槍と同じ獲物を使って行う種目。槍とは異なり、突き・薙ぎができる。ただし、薙ぎの際に硬い柄部分を相手選手にぶつけた場合、危険行為として反則負けになることがある。
獲物自由
長さ | 各獲物ごとに異なる |
分類 | 部外種目 |
[得物自由]
スポーツチャンバラ競技規定ならびに審判規定
第39条
1.得物自由の試合は、各選手が、第30条ないし第38条の2に定める各得物のうち、い
ずれかを把持して、試合を行うものとする。
2.各選手の得物の打突部位は、それぞれ自分が把持している得物の打突部位についての規
定に従うものとする。
3.各選手の身体の有効打突部位は、それぞれ、相手選手が把持している得物の有効打突部
位についての規定に従うものとする。
4.その他、各選手は、各自が把持している得物についての、本節に定める規定に従うもの
とする。
ここで紹介した種目のいずれかを用いて試合を行うことができる。場合によってはもっとも短い短刀と最も長い槍・長巻が対戦することもある。
団体戦
第48条
スポーツチャンバラ競技規定ならびに審判規定
1.団体戦は、各チームから、順次一人ずつ選手を出し、1試合ずつ進行するものとする。
2.各チームは、団体戦開始前に、予め選手が出場する順序を定めていなければならない。
3.最後の選手による試合が終わった時点で、勝敗が決しない場合は、代表戦を行う。
4.代表戦に出場する選手の人選は、選手間の合議または監督の指示による。
ただし、大会主催者が別段の定めをしている場合はそれに従う。
5.代表戦を行っても、さらに勝敗が決しない場合は、別の選手を代表として、勝敗が決す
るまで、代表戦を行う。
基本動作と打突の団体戦がある。選手人数は大会規則によって異なるが、3人・5人・7人のチーム編成が多い。
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